【読書感想】夜にその名を呼べば ~久々に寸暇を惜しんで読んでしまった・・・~ [読書]
表題のごとく久々にあっという間に読んでしまった。
読み始めて僅か2日、それも通勤時間と食後のちょっとした時間だけでだ。
もともと佐々木譲氏の作品は、「 ストックホルムの密使 」や「 エトロフ発緊急電 (双葉文庫―日本推理作家協会賞受賞作全集) 」といった昭和史を題材にした歴史ミステリーが好きで手に取るようになった作家なのだが、今回の東芝機械ココム違反事件を下地にとった現代(もはや歴史の中の話なのかな)ミステリーもなかなか捨てがたい。
本作品は、本当に「どうなるの?」、「ページが足りるのかな?」、「えっ、ページがもうないよ。どうなるの?」と最後まで、一気にストーリーが山を駆け下りてゆく展開で、最後の最後まで息が抜けない。
エピローグ的なところに若干無理があるな・・・と、思いつつもとても完成度の高いミステリーではないだろうか。
もう少し詳細に書きたいのだが、ミステリーの御法度に触れてしまいそうなので、ここまで。
代わりにCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)に関して、最近仕事の上で実際にあった、冷戦は遠く歴史に変わったのだな・・・と思った瞬間の逸話を書いてみたい。
私はプロジェクトマネージャとして、たまに開発契約の詳細をベンダーさんと詰める事がある。
その際に、グローバルなテロとの闘いの一環として、テロリスト・グループ等による通常兵器及び機微な関連汎用品・技術の取得を防止するのを目的としたワッセナー・アレンジメントに基づきプログラムのソースを海外に持ち出しませんよ~、みたいな条項が入っている事がある。
西側諸国の一員として、一応、冷戦下の環境で育った私の様な30代は中学生ぐらいの時にCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)という言葉とその意味を習っている。
よって余り違和感なく、こんな項目があっても、「そういえば昔は、COCOM規制なんてのがあって、パソコン買うといろいろ書いてありましたね~」なんて会話がベンダーさんとも成り立つ。
しかし、これを聞いていた、契約書を持ってきた本人(営業さん、しかも20代前半!)は、非常に当惑気味に「まず、COCOMとは何ですか?」から話がスタートしてしまった。
ベルリンの壁を越え、ブランデンブルグ門の上で合唱していた様子を衛星放送にかじりついて見ていた私が高校生だったのだから、彼がそれを???と思うのは致し方ないのだが、つくづく米ソの冷戦対決というのは<歴史>へと変わりつつあるのだなということを実感したのであった。
閑話休題。
全く関係ない話を書いてしまったが、本書は「冷戦」末期の情勢をうまく捉え、それを物語として昇華した逸作であると私は思う。
読み始めは、「ほうほう」だが途中からは「ジェットコースター」に化けるお勧めの一冊です。
(最高★五個として)
好き度 :★★★★★ (文句なし)
お薦め度 :★★★★★ (移動時間や土曜日の夜など時間がある時をお勧めします。)
かな。
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