「サービス残業の増加を防ぐワークライフバランスの推進」への疑問 ~Foresighより~
世の中ではワークライフバランスの推進という事が言われている。
Forsightの記事も「少子化を止めろ」と題した連載の一つとして標題のような記事を載せていた。
記事のなかでは、昨年の秋以降の不況で残業削減が叫ばれ、見かけ上の数字は減っているが実は「サービス残業」が増えている事を指摘している。そして、従業員にワークライフバランスは自分達の「得」になるものとして考えさえてサービス残業から自発的に脱却せよと述べている、と私は読み解釈した。
しかし、本論には真正面から反論したい。
好きでサービス残業をするバカがどのこの世界にいるというのだ。
筆者である渥美由喜氏は、ワークライフバランスには
- 業務をオープンにして従業員同士共有する仕組み
- 絶えざる業務の改善
- 思いやり(意識面)
の三要素が必要であると述べている。
この三要素に対して2つのパターンの従業員の想定反論を示している。
○エース社員
- ノウハウを抱え込んだ方が得
- 業務改善をして早く業務を終わらせても仕事はさらにふってくる
- 同僚が休むと自分に負荷
○非エース社員
- 実は自分の業務がスカスカだとばれたら困る
- 業務改善は気が乗らない
- 同僚が休むのはずるい
この想定反論はある意味正しいが、私は企業の制度が、従業員の業務と報酬の関係に対してきちんと正面から未だに向き合っていないからこそ起こるものだと思う。
いまだに多くの日本企業は従業員の業務範囲を契約として規定する事はない。
それが日本型経営の強みでもあると言われている。
そりゃそうだ、組織の管理者は少しでも余裕がありそうな人間には際限なく業務を詰め込み、組織の業務効率の極大化を目指す。枠がないのだからエース社員の想定2が現実となる。そして、非エース社員の想定1はばれたらではない、単純にクビにならないから潜んでいるだけではないのか。
はっきりいう、渥美由喜氏は高度経済成長期の日本企業にでもいらっしゃるのか?
いま進行している事は、そんな穏やかな時代の経営学が述べていたスキームで回答を出せるのものではないと思う。
サービス残業をするのは、週40時間の法定内ではとても実現できない様な業務ボリュームを課せられ、それに対応しなければ、明日自分の机があることを保証されないからだ。あるいはされない日が遠からずくるからだ。
また、それに対して企業に反駁できない程、多くの場合は生活が優先されるからだ。
ついでにいうと、私の勤める企業は昨今では育児休業の取りやすい会社として「女子学生」の間では評価が高いらしい。そりゃ、赤ちゃんがいなくなっては売上の一部に大きく影響するので多少は関係するのでね~と私は思っていた。しかし、自分の職場で同僚の女性が休職したらそんな暢気な考えは一蹴した。
休職者は在籍はしているので、頭数としてカウントされる。その結果、残りの人間で彼女の仕事の穴埋めをしなければならない事態となった。でも、残業代は圧縮せよと言う上司の声が。ついでに日々の業務ボリュームは内部統制やらで上昇していく。
社会的な対面は繕わなければならない。でも、その後は前線で良きにやってくれ。
まるで補給を現地調達せよといった帝国陸軍といまの企業は大して変わらない。
全ての企業がこんなに計画性が無いと思わないが、5000人規模の企業でさえこの有様。
これ以上、人が少ない企業で不況にあえぐ企業ではどうなることかと思わないではいられない。
渥美由喜氏も最後に解決策を企業や上司が示せと述べている。
その通り。ワークライフバランスの推進に、従業員の意識を正せというのは筋が違う。
まずは、企業が考え方をあらためる事だ。
それがなければ、従業員は考え方を新たにワークライフバランスを考えるなんて正論をかざす事はできない。
よって、サービス残業の原因を従業員の意識の在り方にあるとする、渥美由喜氏の本稿の書き方には大きな疑問を持たざるを得ない。
コメント 0