【読書感想】コラプティオ ~ 時代をみる作家の既視感 ~ [読書]
2010年の春から今年の春、東北地方太平洋沖地震の発生までに連載された真山仁氏の最新作です。雑誌に連載されたものを大幅に加筆訂正され、大地震が福島第一発電所を飲み込み、その事故から強いリーダーシップをもった首相が、新たな政策とビジョンで日本を復興の軌道へ招くがそこには底知れぬ陰謀が・・・・。といったストーリーです。
加筆訂正前の状態を読んでいないので、あくまでも本書の読書感想です。そして、あまり真面目に書いてしまうとネタバレしてしまい、本として楽しめなくなってしまうので、程々にしておきます。
真山氏は「 マグマ (角川文庫) 」を書かれた時から、日本の国策として成長してきた原子力産業そして電力産業に対する鋭い洞察をお持ちだと思います。
なぜ、原子力産業なのか。そして原子力産業を推進していく上でどんな問題や国際的なポジションを日本が選択しなければならないのか。
そういった点が鋭く書き込まれています。
これまでの作品ももですが、今回もどちらかというと日本の旧弊的慣習や政治に対して、批判的だけれど何とか正しい形で収斂させようという主人公を登場させてきています。
ここに作者の「意思」を感じます。
日本の行く道はどこにあるのかということを強く読者自身に問いかけをしている気がします。
その一方で、強いリーダーシップとカリスマ性をを持った首相を登場させています。
日本人は「場」の創り出す雰囲気にのっかり易い傾向があるように思います。
このような首相が登場したら、どこぞの伍長が邁進したような道を歩む日が・・・・、という日が来るのかもしれないという既視感を想起させるようなストーリーでした。
現実ではないけれど、危うい日本の姿を想起させる内容でした。
内容的には面白く好きな内容ですが、忘れやすく踊りやすい状態にある昨今、得もいえない冷たい風を感じる1冊でした。
好き度 :★★★★ (いまが旬なきがします)
お薦め度 :★★★★ (もしかしたら、未来で既視感を感じられるかも)
かな。
コメント 0