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【読書感想】ルポ貧困大国アメリカ ~将来の日本の姿・・・か?~ [読書]

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 新書

ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112)」は、「医療制度」と「教育」という生活の大きな部分をフレームワークとし、多くの中流階級にあった人々が、「貧困」の世界へ転落していく今日のアメリカの姿を描き出している。

非常に興味深かったのは、貧困層ほど肥満度が子供から大人に至るまで高いということだ。
食事の栄養バランスに気を配ることが難しい階層では、安価で満腹感の得やすい冷凍食品などハイカロリーな食品で生活を回していることが多く肥満度があがってきているという。また給食においても、低価格で満腹感を得られるハイカロリーなメニューが多いようだ。そして貧困層向けの生活補助制度も大きく、マイナスの方向へ舵を切っている為に一日一食を食べるのも困難な世帯も出てきている・・・。

21世紀の今日において、一瞬、どこか別な国の話ではないだろかと目を疑ってしまうような内容だ。

さらに本書は進む。食の次は医療だ。
日本では、非常に大雑把な言い方をしてしまえば、健康保険に加入するれば3割の負担で病院に掛かる事ができる。またその費用もそれほど常識外れな金額を請求されることはない(と、思っている)。しかしアメリカでは保険に入る事もままならず、保険に入っていても民間の医療保険である為、非常に制約も多くなるようだ。そして一度その保険を使用してしまうと、次の保険料は膨大なものになる。その為、保険に入ることが困難になるという悪循環をしている云々。

そして、教育。
ブッシュ政権下で進められている財政改革では医療費や生活補助制度もさることながら、教育費もカットされている。それにより公立学校も民間化と競争原理が持ち込まれ一定の成果がみられないと廃校へ・・・。また日本よりはるかに強い学歴社会であるために、大学への進学希望者は多いが奨学金が大幅にカットされている昨今、学費ローンを組んで進学しその支払いに困窮する人、あるいはそれすら組めずに進学できない人達。結局、この様な人達がどの様な先に行き着くのか云々。

どちらにしても背景にあるのは昨今の新自由主義がもたらす行き過ぎということなのだが、その先にあり甘い解決策を提示している「一大産業」がアメリカ軍であるということ。「家族の健康的安心が欲しければ~」、あるいは「一定期間軍務につけば学費を負担する~」という宣伝のもと貧困層が入隊するケースが非常に増えているようだ。

そして貧困層の多くを形成する移民にも軍の甘い言葉が、入隊すれば市民権がもらえる・・・(グリーンカード兵士とも言うらしい、こんなブログもありした。) 医療と教育と、生活を支える労働のための権利、これらの問題を解決するための手段が軍への入隊とイラクでの勤務ではあまりにも悲し過ぎるようなきがする。

最近の日本国内における米兵の様々な問題も、なんで米兵に米国籍ではない人間がいるの?といった疑問にもその一端ではあろうが回答を示してくれる一冊であった。

なんとなく日本の政策も「民で出来る事は民に」、「小さな政府」なんてもっともらしい言葉の下に少しずつではあるが米国の背中を追っているのではないだろうか。「自衛隊・勧誘・高校生」なんてキーワードで<ググる>と自衛隊でも勧誘が盛んに行われているようだ。確かに自衛隊も私の高校生であった20年前から「防衛大学に行けば学費もタダで給料も出て、食住も提供される」というのが謳い文句だったな~と思い出した。

長くなったが、新書にしてはなかなか読み応えのある1冊であると思う。

(最高★五個として)
好き度     :★★★★   (興味深い)
お薦め度 :★★★★★   (一読の価値はあると思います。)
かな。
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